コラム2019/12/06
「混合介護」Vol.2~新しいモデル事業のメリット・デメリット~
「混合介護」Vol.2~新しいモデル事業のメリット・デメリット~
前回に続き、「混合介護」がテーマです。今回のvol.2では、混合介護を導入するメリットデメリットをご紹介します。本題に入る前に、混合介護のおさらいです。「混合介護」とは、「介護保険サービス」と「介護保険外サービス」を合わせた介護サービスのことでしたね。では、本題のメリット・デメリットについて整理させていただきます。
「混合介護」を導入するメリット
要介護者の生活の質を上げられる
混合介護で最もニーズがある介護保険外サービスは「移動・外出支援」と「家事代行」といわれています。介護保険では日常生活に必要なものの買い物しかヘルパーは付き添えませんが、規制が緩和されれば買い物のついでにアルコールなど特別な趣味嗜好品を買うことができます。さらに、要介護者の立ち寄りたい場所に行くことができます。 また、普段の掃除のついでに衣替えや本の整理などができれば、要介護者の生活の質はよりよくなるでしょう。
同居家族の負担が軽減される
要介護者の分だけでなく、同居家族の分の家事支援も同時に利用できるため、家族の負担が軽くなります。
介護サービス事業者は収益を上げられる
介護サービス事業者に支払われる介護報酬は、法で定められた一定のものです。保険外サービスで収益を上げることが可能になれば、介護職員の待遇改善にもつながると考えられます。
「混合介護」を導入するデメリット
利用者の費用がかさむ
当然ですが、介護保険外サービスが全額自己負担である以上、混合介護を利用すれば費用はその分多くかかります。実際に十分にサービスを利用できるのは、一部の富裕層に限られるのではないかという意見が多くあります。
利用者がどのサービスを選択するか、判断がしにくくなる
現在の介護保険制度も複雑で利用者に十分理解されているとは言い難いうえに、さらに、混合介護によってサービスの多様化が進めば、利用者がどのような組み合わせでサービスを利用するかのが適切なのかを判断するのもさらに複雑になります。
利用者被害が起こりうるかもしれない
要介護者の中には判断力に乏しい利用者も多いため、事業者の言いなりになり高い料金の契約をしてしまうケースが出てこないかが心配されます。
ケアマネジャーの仕事がより複雑・高度に
混合介護により保険外サービスの選択肢が増えるため、うまくケアプランに組み込ませるためには、ケアマネジャーの知識や経験だけでなく、サービスの多様化によって、日々キャッチアップする必要もあり、さらになる努力が求められるでしょう。保険外の組み合わせて、適切なケアプランを提示できるかの手腕がますます問われていきます。
介護保険サービスが不平等に
費用の面で混合介護を利用できる人とできない人が出てくるため、すべての人に平等に行われてきた介護保険サービスの理念が崩れるのではないか、格差を助長するのではないかという心配の声も上がっています。
まとめ
保険外サービスの広がりを見せることによって、「かゆいところまで手が届く」きめ細やかな支援が可能になり、利用者さんやご家族にとって、プラスになる側面があります。一方で、選択肢が増えたがゆえに、選択することがより複雑になることや、費用が理由で選択できない方と選択可能な方との格差助長、判断力が低下したご利用者様に、不要なサービスを契約させる悪徳な事業者の出現等、メリット・デメリットが示唆されています。今後の国や自治体の「混合介護」の推進により、広範囲のサービスを気兼ねなく受けられる利用者、サービスを提供する事業所というバランスが均衡されるためには、もう少し時間がかかるかもしれません。