コラム2019/12/05
胃切除後の食事の注意点~ダンピング症候群について~
胃切除後の食事の注意点~ダンピング症候群について~
胃癌などにより、胃を切除した後は依然と同じように食べることはできません。胃を切除した後に起こる代表的な症状の一つに“ダンピング症候群”があります。こういった症状や胃切除後のお腹の仕組みの変化について正しい理解をご本人様が持っていなければ「少しでも沢山たべなければ!」と強く意識したり、焦ったりする気持ちによって症状を加速させる要因になりかねません。今回はダンピング症候群と胃切除後の正しい食事法に関してご紹介をさせて頂きます。
ダンピング症候群とは?
ダンピング症候群とは、胃切除後、食物が急激に小腸に落ちることで、栄養分が急激に吸収されたり、逆効果的に吸収できなかったりするためにおこる症候群です。全摘を含む胃の幽門部を切除したときに起こりやすく胃切除患者の10~40%に起こると言われています。これは病気というよりも、からだが手術後の新しい環境に慣れるまでに通っていかなければならない道のりの一つと考えるべきでしょう。ダンピング症候群は、症状の発生する時間によって早期ダンピング症候群と晩期ダンピング症候群に分けられます。
早期ダンピング症候群
食後30分くらいの間に起きます。血糖値が急に上昇することで、おなかがはり、吐き気や嘔吐、腹痛が起き、顔面が紅潮したり脈が速くなり発汗が起きたりします。糖分を多く含む食事や甘みの強い流動食を控えることが予防になります。
晩期ダンピング症候群
食後2~3時間して起こります。食物が腸に移動し、短時間で吸収されるため、一時的に高血糖になります。これに反応してインスリンが大量に分泌され、逆に低血糖になることが原因です。症状としては、頭痛や倦怠感、冷や汗、めまい、手指の震えなどです。症状が起きそうだと感じたらすぐに飴などをなめるようにします。
ダンピング症候群の治療に関して
まず大前提として、ダンピング症候群はあきらかな病気ではありません。なので、薬に頼らず食事療法を工夫して乗り切っていく事が大切です。早期・晩期に関わらず、ダンピング症候群の本質は胃切除によって食物が急速に小腸内に墜落することですので、最も注意すべき点は食事の量とスピードです。少量ずつ、ゆっくりと時間をかけて食べる事を心がけて下さい。
では、具体的な食事療法に関して、具体的な対処法をご紹介させて頂きます。
・ 一口分を20~30回程度は噛む
・ 1回の食事量を減らし、食べる回数を増やす
・ 食事中の水分摂取を避ける
・ 甘いものや炭水化物を控える
・ 食後はしばらく頭を高くして横になる
ご本人が無理をし過ぎないよう周りの方々がフォローをしてあげる事が大切です。
まとめ
今回はダンピング症候群と胃切除後の食事方法に関してご紹介をさせて頂きました。多くの場合、半年から1年で症状が改善するとされています。「少量ずつ」「よく噛んで」「何回かに分けて」「ゆっくりと」を心がけて、正しい食べ方に本人が慣れていくよう、周りの方々も食べるペースを合わせてあげるなどの配慮が楽しい食事を続けていく為には大切です。