コラム2021/03/08
「睡眠関連食行動障害」って?Vol.2睡眠中に無意識に食べ物や飲み物を摂ってしまう
「睡眠関連食行動障害」って?Vol.2睡眠中に無意識に食べ物や飲み物を摂ってしまう
前回は睡眠関連食行動障害についてお話しました。今回は睡眠関連食行動障害と勘違いしやすい病気に夜間摂食症候群も含め続きをお話致します。
睡眠関連食行動障害と勘違いしやすい病気に夜間摂食症候群って?
名前も似ているので実に紛らわしいです。夜間摂食症候群は就寝前や夜間覚醒時に何か食べたくて仕方がない、我慢できずに食べてしまうのが特徴ですが、食べている間もしっかり「目が覚めている」。夜中に炭水化物が欲しくなってついついスナックやカップ麺などに手が出てしまう経験は誰しも持っているのではないでしょうか。夜間摂食症候群はその重症型と考えればイメージしやすいかと思います。
睡眠関連食行動障害と夜間摂食症候群の違いって?
ポイントは食行動の間も目が覚めていない、眠り続けたまま食べている点です。逆に言えば、このような異常な食行動は眠っている間にだけ出現する。仮に食事中に何かの刺激で目覚めれば食行動はストップする。つまり覚醒中も食がコントロールできない摂食障害とは本質的に異なります。
眠りながら食べまくる症状の記録動画!?
睡眠関連食行動障害の原因は十分に解明されていないが、比較的深い睡眠から食行動が始まり、しっかりとした覚醒に至らないままに食事を続けてしまう一種の覚醒障害(目覚めの神経システムがうまく働かない)であることが分かっています。そのため、驚いた家族が声をかけてもなかなか目を覚まさないことが多いです。エピソード記憶(起こったイベントの記憶)や判断力を司る前頭葉は睡眠状態のまま、運動(側頭葉)や視覚(後頭葉)を司る他の脳領域は覚醒状態に近いなど、脳がまだら上に覚醒(睡眠)しているのだと主張する研究者もいます。
夢中遊行(夢遊病)とは違うの?
「深い睡眠中に異常行動が出現して起床後に全く憶えていない」と聞くと、夢中遊行(夢遊病)を思い出す読者もおられるだろう。睡眠関連食行動障害と夢中遊行には共通点が多いが、睡眠関連食行動障害では異常行動が食行動に集中している点がユニークです。
なぜ睡眠中に食行動をするの?
なぜ睡眠中に食行動という限定された行動が出現してしまうのか、そのメカニズムは不明です。先にも書いたように摂食障害やダイエット中の人でしばしば見られることから、食に関する認知の歪みや潜在的な食欲の高まりがトリガーとなって場合もあるようです。
懸念されるのは、この睡眠障害は長丁場の闘いになることが臨床研究で明らかになっている点です。夜間の食行動が10年以上も続いているケースも報告されている。「原因不明の」肥満に悩み続け、さまざまな医療機関で診察を受けたが原因が分からず、長期間を経てようやく睡眠関連食行動障害の診断を受けた人もいるんです。
治療法はあるの?
残念ながら治療法は手探りで進めているのが実情です。抗うつ薬や睡眠薬、ある種の抗てんかん薬、心理療法などによって症状が軽減することがあります。お酒やカフェインも控えた方が良いですね。何もしなければ症状は遷延することが多いので、ご心配であれば睡眠医療の専門施設に相談に行くことをお薦めします。
まとめ
少しでも気になることがあれば睡眠に詳しい医師へ相談するのが安心につながるかもしれませんね。なお、Youtubeに米国VOAが睡眠関連食行動障害の番組を公開しています。中年女性の夜間の食行動の映像記録とともに、詳しい症状や治療経過がレポートされています。
https://youtu.be/4cFP4uoXlIw