コラム2020/12/07
介護事業者の倒産、年間最多に
介護事業者の倒産、年間最多に
今月3日に東京商工リサーチが出した緊急レポートによると、今年、介護事業者の倒産が過去最多を更新したようです。
倒産件数はすでに年間最多を更新
2020年1月から12月2日までの「老人福祉・介護事業」倒産は112件(前年比0.9%増)で、これまで年間最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多記録を更新しました。このペースで推移すると、2020年(1-12月)は120件を上回る可能性が出てきました。
負債総額は135億6,300万円(同16.1%減)と減少しています。これは負債1億円未満が90件(構成比80.3%)、従業員5人未満75件(同66.9%)など、小・零細事業者を中心に推移したためです。
倒産の状況
2020年1月から12月2日まで「老人福祉・介護事業」倒産が112件に達し、介護保険法が施行された2000年以降でこれまで最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多件数を更新しました。
ヘルパー不足が続く「訪問介護事業」が52件(構成比46.4%)と半数近くを占めた一方、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が36件(同32.1%)と増加しました。
従業員5人未満が75件(同66.9%)、負債1億円未満が90件(同80.3%)と、小・零細事業者を中心に推移しています。
国や金融機関などの新型コロナ支援で踏みとどまり、新型コロナ関連倒産は10月までに累計3件にとどまっていました。しかし、11月単位は4件と急増しており、全体の件数を押し上げました。コロナ支援効果が薄れ、介護業界でも息切れの兆しがうかがえます。
倒産状況の分析
これまでは小規模な訪問介護事業者や、デイサービスなどの通所・短期入所介護事業の倒産が増加し、年間100件以上で推移していました。2020年はそこに新型コロナ感染拡大で、感染を恐れた利用者の利用控えものしかかり、経営環境が大きく変わりました。
「老人福祉・介護事業者」には、通常の持続化給付金や雇用調整助成金などの新型コロナ支援に加え、業界独自の助成金などの支援もありました。これらを活用し、事業を継続してきた事業者は多かったようです。しかし、感染者数が再び増加するなど、収束までの道のりが見通せず、事業意欲を喪失する経営者も増えており、休廃業・解散を押し上げる要因になっています。
コロナ前の売上高に回復できず、影響が長期化していることで、新型コロナの支援効果も次第に薄まっています。「老人福祉・介護事業」の新型コロナを要因とする倒産は、10月までに3件にとどまりましたが、11月はデイサービス事業者など4件判明し、ここにきて急増しています。
新型コロナで経営体力が落ち込む事業者が増えています。また、新型コロナ支援で調達した借入金で一時的に資金繰りが緩和しても、事業回復が遅れると過剰債務wp解消する目途が立たず、、将来の負担増から経営意欲の減退につながることが危惧されます。感染拡大の動向次第で、小・零細規模の事業者の事業継続に向けた追加支援も必要でしょう。
2021年4月に、3年に一度の介護報酬が改定されますが、本格的な高齢者社会を迎え、「老人福祉・介護事業」の今後を左右しかねません。介護業界は、人手不足や生産性向上、介護職員の育成など、新型コロナ以外でも課題が山積みとなっています。追加支援や介護報酬の改定次第で、「老人福祉・介護事業」の倒産や「休廃業・解散」は大きく影響を受けそうです。
まとめ
今回は、介護事業者の倒産状況についてお話いたしました。業界全体としてこれから超高齢化社会という大きな問題に向き合っていかなくてはならない今の日本において、新型コロナという大きな問題が更にのしかかる現在の状況は「厳しい状況」と言わざるを得ないようです。