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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

8050問題 情報発信・共有・連携強化の重要性

コラム2020/10/16

8050問題 情報発信・共有・連携強化の重要性

8050問題 情報発信・共有・連携強化の重要性

2010年代以降、深刻な社会問題としてクローズアップされている「8050問題」。今回は在宅に於いても実際に触れる機会のある「8050問題」についてお話させていただきます。

8050問題とは

8050問題とは、引きこもりの長期高齢化により、80代の親が50代の引きこもりの子を支え、親子が社会から孤立していくケースなどを指します。内閣府の2018年度の調査によれば、40~60歳の引きこもりは全国に61万3000人いると言われており、このまま放っておけば「9060問題」にまで発展し、事態が更に深刻化してしまう事は必然です。

8050問題はなぜ深刻化したのか

8050問題が深刻化した理由に関して、ジャーナリストの池上正樹氏は次のように述べています。

「親世代である今の70~80代の人たちは、右肩上がりの時代の中でポジションを勝ち取ってきたという成功体験を持っている一方で、その子世代である今の40~50代の人たちは、若い頃からバブル崩壊など不遇の時代を経験していて、両者の価値観には大きな隔たりがある。親世代は他人との比較評価をしてしまう価値観があり、引きこもりになってしまった子供を“恥”だと思い、存在を周囲に隠すようになる。誰にも相談できず、家族全体で長期にわたって孤立することになってしまいます」

本来であれば価値観の不一致は「話し合い」によってある程度埋められる可能性がありますが、親子関係が悪化し、日常のコミュニケーションがなくなってしまうとそれも難しくなります。生活保障や障碍者の手帳を取得したくても、それを“恥”だと思っている親によって隠されてしまい社会や支援と繋がれない。こうした引きこもりに対しての行き過ぎたマイナスイメージ、価値観の押し付けが事態を更に深刻化させていると言えるのかもしれません。

在宅からのサポート!情報発信の重要性

訪問する事で明らかになる引きこもり家庭も数多くあります。引きこもりのお子さんを抱え、この先どうしたらいいのかと不安に感じながら過ごされている患者様、ご利用者様に関わったことがある関係者様もいらっしゃるはずです。当院の相談員もケアマネージャー様からそのような相談を受けることが度々あります。
そういった現場に遭遇した際、私たちは何をするべきなのでしょうか。ご家庭が違えばできることも違うという前提はあるものの、私たちがまずやるべきことはそのご家族を助けられるサービスの情報をわかりやすくお伝えする事かと思います。高齢者はインターネットを使えない方も多く、いくら国が情報を発信していても若い世代のように、情報をタイムリーに得ることができません。ひきこもり支援の相談窓口があること、我々のように精神疾患に対して在宅で介入ができる医療機関があることなど、サポートが期待できる機関やサービスの情報を発信することは、そのご家族にとって、問題解決の糸口になるのではないでしょうか。

まとめ

長年にわたり形成された家族の問題に第三者が介入していく事は非常に難しいことです。我々が様々な提案をしても、その方に状況の変化に耐えられる精神力や体力が伴っていなければ、環境をかき乱すだけの結果になる可能性も十分に考えられます。しかしながら、適切な情報の取得と共有、多職種連携の強化によってサポートできる範囲は増えると考えられます。当院においても、一人でも多くの患者様、地域の方々のお力になれるよう情報の発信・共有・連携強化に努めてまいります。