コラム2020/09/01
統合失調症との向き合い方Vol.1 疾患について知ろう
統合失調症との向き合い方Vol.1 疾患について知ろう
在宅医療において統合失調症があるけど診察は可能かと聞かれることがあります。結論を言えば、診察は可能です。しかし、知っておいていただきたいのは認知症もそうですが、すべての病気は薬物療法で「治る」ものではありません。今回は、統合失調症についてお話させていただきます。
統合失調症とは
統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。約100 人に1 人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。薬や精神科リハビリテーションなどの治療によって回復することができます。
発症の要因は
統合失調症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることが関係しているのではないかといわれています。また、大きなストレスがかかることなども関係あるようです。遺伝子も関与しているといわれていますが、単純に遺伝子だけの問題ではなく、さまざまな要因が関与していると考えられています。
どういった症状なの
統合失調症の症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けることができます。
陽性症状
妄想
「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。
幻覚
周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、ないはずのものが見えたり(幻視)して、それを現実的な感覚として知覚する。
思考障害
思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。
陰性症状
感情の平板化(感情鈍麻)
喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなる。
思考の貧困
会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。
意欲の欠如
自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。
自閉(社会的引きこもり)
自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。
認知機能障害
記憶力の低下
物事を覚えるのに時間がかかるようになる。
注意・集中力の低下
目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることができなくなる。
判断力の低下
物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、計画を立てたりすることができなくなる。
病気の経過と症状は
統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・消耗期(休息期)・回復期に分けられます。それぞれの病期で特徴的な症状が認められます。
前兆期
特に目立った症状はありませんが、何となく変だと感じるようになります。
眠れなかったり、イライラしたり、集中力が低下するなどの症状が続きます。
急性期
幻覚や妄想など不思議な体験をするので、自分の中で何かが変だと感じながらも、自分が病気だと思えず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じたりします。
消耗期(休息期)
幻覚や妄想などの目立った症状は少なくなりますが、元気がなくなったり、やる気が起こらなくなったりします。これは、急性期に心と体のエネルギーをたくさん使ってしまったことが原因と考えられていますので、薬を飲み続けながら、ゆっくりと十分に休むことが必要です。
回復期
少しずつ元気が出てきて心も体も安定してきますので、焦らず、ゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。また、再発予防のために薬を忘れずに飲むことが大切です。
どう治療していくのか
統合失調症の代表的な治療として、薬による治療と精神科リハビリテーションがあります。急性期には薬による治療が基本になりますが、なるべく早い時期から薬と精神科リハビリテーションを組み合わせた治療を行うことが効果的です。
まとめ
今回は統合失調症の概要についてお話しました。精神疾患であることから精神科医に診てほしいという希望もあるかと思います。当院でも訪問診療にて精神科医が介入することは可能です。精神科医介入に関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。vol2では薬物療法を含めた治療についてお話致します。