コラム2020/07/21
介護職員の業務範囲はどこまで?~規制改革会議~
介護職員の業務範囲はどこまで?~規制改革会議~
今月2日、政府の規制改革推進会議では、より効率的で質の高い介護サービス提供体制の構築を目指す上で、介護職員の業務範囲の問題にも言及しています。
医師や看護師らが担うべき医療行為に該当するか否かが曖昧で、介護職員が実施を躊躇してしまう業務が少なくないと指摘し、介護現場で求められることの多い業務を中心に、医療行為でない範囲を改めて明確にすべきだと提言しました。
看護師や介護職員の医療(補助)行為について
医療行為(法律用語では医行為)には、行為者による分類として、医師の資格を有するものしか行うことができない絶対的医行為と、医師以外の者でも行うことのできる相対的医行為があります。後者には、看護師などの医療関連職種の資格がある者が行う方が好ましい行為と、そのような資格のない者でも行える行為があります。
また医師は、自らの管理・指導の下に相対的医行為にあたる医療行為を、看護師や介護職員に委譲することができます。問題は、何が相対的医行為なにかがこれまで明確でなかった点にあります。そのため、医療食の配置が少ない介護の現場においてはさまざまな解釈がなされ、事実上、介護職員による医療行為が行われていました。
在宅や施設での医療行為と介護職のかかわりについて
医師法第17条で規定されている医業とは、医療行為を「業」として行うことです。「業」とは「反復継続する意思をもって、不特定の人に対して行う行為」をいいます。自分自身や家族は不特定の人にあたらないので、これらに対する行為は反復継続しても業にはなりません。そのため、在宅医療においては、糖尿病患者が、反復継続してインスリン注射をしたり、家族に注射してもらったりしても、いずれも医業にはなりません。
一方、看護師は不特定の人を相手にするので、医師の指示がなければ医療行為を行うことができません。ただし、臨時応急の手当ては反復継続する意思がないので、医業にはあてはまらず、、医師の指示を得なくとも緊急避難的に行う医療行為は許されます(保助看法第37条)。
介護職員は、医師や看護師の指示があっても、法律上、医療行為を行うことはできません。
このように、看護師や介護職員の医療行為の法的制限は、長期療養を必要とする高齢者や障碍者が施設など多様な暮らしの場で、医療を継続しながら生活したいと願うとき、制約を受けるという課題がありました。入院期間の抑制や療養病床の削減により、今後も医療依存度の高い要介護者が十分な医療配置がない在宅や施設に増加することは明らかで、明確な基準のないまま、介護職が医療(補助)行為を担わざるを得ない状況が常態化している状況は放置できない問題となっていました。
規制改革推進会議の内容
例えば、膀胱留置カテーテルのバッグから尿を廃棄する事、酸素マスクのずれを直すことなどを「医行為でない範囲」として例示しました。介護職員が安心しておこなえるようにするとともに、医師や看護師らの協力も得られるようにすべきだと要請しました。
まとめ
介護職員の業務範囲をめぐっては、血圧の測定や点眼薬の点眼、軽微な切り傷、擦り傷、やけどの処置などが医行為にあたらないことを明示する通知を、厚生労働省が2005年に発出しています。それから約15年が経過した今、疾病構造やニーズの変化、国民の知識の向上、医学・医療機器の進歩などが生じたことで、規制改革推進会議は再整理すべき時期に来たと呼びかけています。