よくある質問
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“最期まで家で”という願いを、静かに支えた在宅療養の記録
■ 基本情報
年齢・性別:93歳・女性
居住地:名古屋市西区
家族構成:長男夫婦と3人暮らし(キーパーソン:長男の妻)
市内に次男も在住■ 医療・介護情報
- 医療保険:後期高齢者医療(1割)
- 介護保険:要介護1(1割)
- 主な健康課題:
・外陰がん(局所再発あり)
・鼠径リンパ節転移
・肝転移の疑い
・高血圧症
・骨粗鬆症
■ 訪問診療導入の経緯
数年前より、外陰部に腫瘤を認め近隣医療機関を受診。検査の結果「外陰がん」と診断され、局所切除による治療を受けていた。
しばらく経過をみていたが、その後再発が確認され、腫瘍は徐々に拡大。下部尿道や肛門周囲に圧排を及ぼし、左鼠径リンパ節および肝への転移も疑われる状態となった。病院側では放射線治療等の選択肢も提示されたが、年齢や全身状態、そして何よりご本人とご家族の希望をふまえ、**「これ以上の積極的治療はせず、残された時間を自宅で穏やかに過ごしたい」**という方針に至った。
すでに認知機能の低下もあり、ご本人には病状の詳細は伝えず、できる限り苦痛を抑えた在宅緩和ケアを目的に訪問診療が開始された。
■ 在宅での支援内容と家族の関わり
在宅療養開始後は、ご本人の表情や呼吸の変化、ご家族からの細かな報告をもとに、無理のない生活環境と苦痛緩和に焦点をあてた関わりを続けた。
医療的処置は行わず、日々の観察とコミュニケーションを通じて“最期まで家にいる”という想いを叶える支援となった。介護の中心を担っていたのは長男の妻であり、不安を抱えながらも「家で看たい」という強い意志を持って関わっていた。
医療と介護の連携により、「できる範囲で」、「できることを」という支援スタンスが、ご家族にとっても無理のない関わり方となった。■ ご本人の最期
在宅開始から間もない時期ではあったが、ご家族に囲まれたご自宅で、穏やかな表情で息を引き取られた。
医療的な延命処置は行わず、静かな看取りとなった。ご家族からは「本人の望んでいた通りに見送ることができた」という言葉が聞かれ、在宅支援の意義をあらためて感じる機会となった。
■ この事例から見えること
- 医療処置を行わなくても、“家にいたい”という気持ちを支えること自体が医療の役割になることがある
- 在宅療養は、「治療をしない」という選択をした方にとって、もっとも自然な時間を過ごす手段になる場合がある
- 支援体制が整いすぎていなくても、“思い”が中心にあるケースほど、訪問診療が入る意義が明確になる
このようなケースでは、大きな医療行為がなくとも、そばにいてくれる安心感そのものが支えとなる。
在宅医療が果たす役割は、“治すこと”以上に、“寄り添うこと”にあるのだと実感させられたケースである。
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